Supervisor

井上 晴洋 先生
昭和大学 江東豊洲病院 消化器センター
1、POEMとは?
アカラシアとは一次性食道運動障害です。「a=無」とギリシャ語由来の「chalasis= = 弛緩」からなる病名です。アカラシアの主症状は嚥下困難、未消化の食物の逆流、胸痛などがあります。嚥下困難は、緩徐ではありますが、増悪する傾向があります。
POEM(経口内視鏡的筋層切開術:Per-OralEndoscopic Myotomy)とは、この疾患の完治を目的とし開発された内視鏡治療です。POEMは、体表に傷をつけずに従来の外科手術と同様に食道筋層切開術を行うことができます。
全世界で数千例のPOEMが施行されています。熟練した医師が行うと、重大な偶発症を起こすことなく、優れた効果をもたらします。
2、機器
ディスポーザブル高周波ナイフ(KD-645L)
モデル名 | 適用チャンネル径 | 有効長 | 切開ナイフ長 | 切開ナイフ径 | 三角チップ長 | 三角チップ厚 | 滅菌済みディスポーザブル | ハンドル一体型 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|
KD-645L | 2.8mm以上 | 1,650mm | 4.5mm | 0.4mm | 0.4mm | 0.3mm | ○ | ○ |
高周波焼灼電源装置ESG-300の設定
手技 | モード | 出力(W) | エフェクト |
---|---|---|---|
切開 | パルスカットスロー | 30 | 2 |
剥離 | スプレー凝固 | 30 | 3 |
筋層切開 | スプレー凝固 | 30 | 3 |
ナイフによる止血 | スプレー凝固 | 30 | 3 |
止血鉗子による止血 | ソフト凝固 | 50 | 2 |
関連機器
項目 | 数量 |
---|---|
EVIS LUCERA ELITE ビデオシステムセンター CV-290 | 1 |
EVIS LUCERA ELITE 高輝度光源装置 CLV-290SL または EVIS LUCERA ELITE 高輝度光源装置 CLV-290 |
1 |
EVIS LUCERA ELITE 上部消化管汎用ビデオスコープ GIF-Q260J |
1 |
EVIS LUCERA ELITE 上部消化管汎用ビデオスコープ GIF-XP290N | 1 |
高周波焼灼電源装置 ESG-300 / 400 | 1 |
内視鏡用炭酸ガス送気装置 UCR | 1 |
低流量ガスチューブ MAJ-1742 | 1 |
ディスポーザブル高周波ナイフ KD-645L | 1 |
ディスポーザブル高周波止血鉗子 FD-411UR | 1 |
透明キャップ MH-588 | 1 |
ディスポーザブル注射針 NM-610L-0426 | 1 |
ディスポーザブル回転クリップ装置 HX-202LR | 2 |
ディスポーザブル回転クリップ装置(ロングアーム) HX-201LR-135L | 15 |
3. 術者資格
POEMを行うには高度な内視鏡技術を要するため、熟練した内視鏡医と外科医の協力のもとに施行する必要があります。特に、初回の数例はPOEM経験の豊富な医師の指導のもとに行うことが強く推奨されています。
4. 前処置、麻酔
4.1 前処置
4.2 麻酔
(1) POEMは換気を調節した(陽圧)全身麻酔を要するため、麻酔科医の管理のもとに行われます。
(2) 特に拡張した食道を有する症例の場合、食道内容物を内視鏡鏡的に除去することが全身麻酔中の誤嚥性肺炎予防に有用です。
5. 準備
5.1 体位
(1) 仰臥位
(2) 気腹を確認しやすいように被患者さんの腹部(上腹部)が見える状態にします。
(3) 8%の症例で術中に気腹症を認めます。
5.2 構成
(1) 気管内挿管による全身麻酔が必須です。よって、この術式は麻酔科医の管理のもとに行われます。
(2) 内視鏡デバイスは全てエチレンオキサイドガス(EOG)で滅菌します。
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