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食道・大腸ESDを施行するための技術的な条件

〈静岡県立静岡がんセンター、国立がん研究センター中央病院の場合〉

食道ESD 静岡県立静岡がんセンター内視鏡科

当院で、研修医が食道ESDを施行可能になるまでにどのような取り組みを行っているかをお話しします。まず上部消化管内視鏡の通常検査を正確に、見逃しなく、写真をきれいに撮影できること、大腸内視鏡を5分以内に苦痛なく挿入できることが大前提です。さらに正確な早期癌の深達度や範囲診断などが可能になった上で、豚の切除胃で1、2回ESDトレーニングを行います。その後に実際にESDを始めることになります。
まずは胃の前庭部の適応病変から始め、体部の適応病変、前庭部の適応拡大病変、体部の適応拡大病変へと徐々に難度を高めます。これらの病変全てが目安として40分以内に切除可能となったら、食道や大腸に進むというプロトコルになっています。なお、基本的なITナイフの操作方法は胃で十分に学ぶべきであり、トレーニングを積むことによって誰もが施行可能な手技だと思います。海外ではそもそも早期癌を発見するようなシステムがないためにESDを行うような環境ではないようですが、数多い症例を扱っている日本の病院で研鑽を積むことによって、海外のドクターも問題なくESDを習得できるようになると考えています。

小野 裕之先生

大腸ESD(直腸2cm程度から)国立がん研究センター中央病院内視鏡科

研修医のレベルにもよりますが、基本的には大腸内視鏡挿入、観察、通常のEMRがしっかりできることが最低条件です。その後、胃ESDをある程度経験してもらうことになります。当院では大体20例ぐらいが一つのターニングポイントです。最近は20例に至らなくとも、ある程度大腸内視鏡の技術がしっかりしていて、胃ESDもできるということであれば大腸、特に直腸から始めてもらう場合もあります。直腸では、穿孔の危険が少なく、スコープの取り回しもしやすいからです。
大腸ESDでは、スコープをしっかり固定して自由自在に動かせる技術がないと、安全に施行することは厳しいと思います。胃ESDでは、アクセルだけ踏んで切るイメージでも、何となく切れてしまうことがありますが、大腸ESDでそのようなことをするとすぐに穿孔してしまうので、むしろブレーキでコントロールしながら切っていくイメージが大切です。安全なデバイスを使用して、適切な理論に基づいた大腸ESDを行うことで、安全・確実な治療が可能となります。また、ESDを開始する前に、拡大内視鏡診断学を確実にマスターしておくことがより重要です。

斎藤 豊先生

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