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局注で勝負あり! 一連の手技の成否を左右する局注の重要性

局注はESDを行ううえでの初めの一歩であり、適切な第一歩(局注)を踏み出せるかは、ESDの成功に大きく影響を与えます。局注で適切な膨隆を形成できれば、その後の粘膜切開が容易となり、ESDで最初の関門 となる、粘膜下層への潜り込みまでを一気に切り進めることが可能となります。

そのため、たかが局注とあなどることは決してできません

ヒアルロン酸ナトリウム溶液が有用性を発揮する状況

局注液は、食道と大腸では全例に、内視鏡用粘膜下注入材として承認されたヒアルロン酸ナトリウム溶液(以下、HA溶液)原液に少量のエピネフリンとインジゴカルミンを添加したもの(HA溶液20mL+エピネフリン0.2mg+0.4%インジゴカルミン数滴)を使用しています。

 

一方、胃では部位や症例により、生理食塩液(生理食塩液250mL+エピネフリン3mg+0.4%インジゴカルミン2mL)とHA溶液を使い分けています。胃体部大彎側や穹窿部の病変、また線維化の強い症例では、高さのある粘膜隆起を維持するため、粘稠性の高いHA溶液原液の使用が必要です。


これに対し前庭部などは隆起が維持されやすい部位のため、生理食塩液の局注でも問題なく切開・剝離が進められます。むしろ、こうした部位にHA溶液を局注すると、剝離された粘膜の裏側に局注液が残り、フラップ部分が厚く膨らむことで、その後の剝離の際に視野を妨げる可能性があります。生理食塩液は不必要に剝離後の粘膜下層にとどまらず自然に抜けていくためそのようなことは起こらず、良好な視野のまま剝離を進めることが可能です。

局注針選択のポイント

局注を行う際は、血管網の少ない粘膜下層深部かつ、筋層には届かない深さに針先があるかなど、穿刺した針先がどこに位置しているのかを細かくイメージすることが重要です。針先をコントロールしながら局注液を入れていくことで、膨隆形状や膨隆の高さを意図的にデザインすることが可能となります。

 

当院では、穿刺後、意図せず針先が抜けてしまうことが起きづらく、穿刺の深さの調整がしやすいことから、4mmの局注針を使用していますが、どの針長を選択しても、針先がどこに位置しているかの感覚を術者がしっかりと把握しておくことが重要です。

 

針先の形状については、一般的に鈍針よりも鋭針のほうが刺さりが良いと思われますが、鋭針は鈍針に比べて針の断面積が大きいため液漏れが多いというデメリットがあります。特に大腸など粘膜の薄い臓器では、針先を手前に戻してきた際に針穴部分が粘膜表面から抜け、局注液が漏れてしまうことが起こりえます。

 

そのため、大腸では鈍針でも高い穿刺性を備えた局注針が有用と考えます。最近の局注針は針先端形状をランセット型に加工することで切れ味の向上が図られており(図1)、鈍針でも大腸の局注に対し十分な穿刺性が得られる点で、有用と感じています。

また、粘稠性の高いHA溶液の局注をスムーズに行うには、局注針の高い送液性も重要ですが、昨今では針の内腔を広くすることで送液性の向上が図られています。細めの25Gを選択すると、穿刺孔からの局注液の漏れを抑えて膨隆をより維持できると同時に、送液抵抗の少ないスムーズな局注手技を行うことができ、メリットが大きいと思います。(図2

図1:針(鈍針)の先端形状の違い      図2:局注針の内腔の大きさの違い

図1:針(鈍針)先端形状の違い 竹割型

図1:針(鈍針)先端形状の違い ランセット型

図2:局注針の内腔拡張の違い 従来

図2:局注針の内腔拡張の違い 現在

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