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針の把持

針の配置

針を重力方向の平らな場所に置く

対象の部位へ、縫合糸全体(糸の尾部まで)が完全に入ったことを確認したのち、針本体を把持します。

まず、針先が縫合する方向に向くように、持針器を用いて針を管腔内の適切な位置に移 動させます。鉗子口が5時方向にある場合は針先が左向きになるように、針を管腔内の 重力方向の平らな場所に動かします。なお、管腔内に水や血液が残っていると把持する 際に針が水浸し、良好な視野を確保するのが難しくなりますので、事前に十分に吸引し ておきます。(写真1)

  • (写真1)

針糸の把持位置と針糸へのアプローチ方向

針の尾部から1/3-1/2の位置を把持する

適切な運針を行うには針を適切な位置で把持することが重 要です。先端に近すぎると針が組織を貫けず、針先を把持できなくなります。一方、針の尾部は断面が円に近くなるため、 尾部に近すぎると針糸の固定力が弱くなり、固定していた 針の角度が動いてしまうことがあります。針の尾部から1/3- 1/2の位置を把持するようにします。

持針器を針の円弧に対して垂直に近づける

スコープ操作によって持針器の方向が針の円弧に垂直にな るように調整し、持針器を近づけていきます。

カンシが針に対して垂直になるように回転調整する

持針器の回転操作によってカンシが針に対して垂直になるように調整します。把持部が針に対して傾いていると把持時に針が逃げてしまい、空振りしやすくなります。傾いた状態でも把持できることがありますが、その場合持針器の回転操作を行っても針先端が適切に回転せず、組織の刺入が困難になります。また、針糸把持面の片側の下顎部分に、針が乗っている状態で針糸を把持すると、針に力がかかる場面などで針が外れることがあります。

持針器ですくい上げるように針糸を把持する

針糸の針部を持針器の針糸把持面とカンシとの間で挟み、 スライダーを握って把持します。この際、針糸把持面先端の 爪部(下顎部)を意識し、針のやや下方からすくい上げるよう に持針器を動かします。カンシが下り、針が把持されはじめ たところで、針面が持針器に対して垂直になるように持針器 先端を壁に軽く押し付けながらスライダーを握ります。適切 な角度で把持できたところでしっかりとスライダーを握りこ みます。

針の把持は近視野で行う

スコープから遠い視野で針の把持を行おう としても、把持部の奥行き方向の距離感が 掴みづらいため空振りしやすくなります。適 切な距離を保ちつつ、近視野で持針器先端 の構造を意識しながら把持動作を行うよう 心がけます。

  • (写真1)

  • (写真2)

  • (写真3)

針の向き補正

針面が持針器に対して垂直でない場合

把持を緩める

針面が持針器に対して垂直でない(針が倒れている)場合、持 針器先端を壁に軽く押し当てた状態でラチェット解除ボタン を押し把持を緩め、いわゆる“甘噛み状態”にします。

針を壁に押し付け針を挙上させる

“甘噛み状態”を作ったら、内視鏡でダウンアングルをかけ て粘膜に針糸を軽く押し付けます。すると、把持している針 糸が粘膜に押され適切な角度に起立します。針面が垂直に 立ったところでスライダーを握りこんでしっかり把持します。

針がなかなか挙上されない場合には、
スライダーを細かく前後に動かす

針先端と尾部が挙上されにくい場合、スライダーを細かく前 後に動かし、持針器先端に振動を与えることで針面が適切に 挙上されることがあります。

針が斜めに把持されている場合

把持を緩める

上記同様、持針器先端を壁に軽く押し当てた状態でラチェッ トを静かに解除し、甘噛み状態にします。

針の遠位側を管腔壁に押し付ける

持針器から見て遠位側にある針の部分(先端部もしくは尾 部)をひだなどの管腔壁にゆっくり押し付けながら角度を修 正します。針先端と尾部を結ぶ線が持針器に対して垂直に なったところでスライダーを握りこんでしっかり把持します。