
局注針を用いた安全・確実な穿刺手技の工夫
局注針の穿刺手技において、右手のスナップを利かせながら刺す方法は、スコープを保持する右手を離して行わざるをえません。そのため、しばしば刺す動作の反動でスコープが手前に押し戻されてしまい、針を押し出す力が粘膜に伝わらずにうまく穿刺できないということが生じます(図3)。
さらに病変との距離や視野も動いてしまい、穿刺部位を確実に視認しながらの局注が難しくなります。また、大腸ESDでは右手が離せない状況が多々あるため、スコープから手を離さずに穿刺するテクニックを私たちは多用しています。
図3:局注穿刺時にスコープから右手を離さないことの重要性
針を左手で刺す
左手で穿刺針シースを鉗子チャンネルに出し入れする方法は2通りあり、一つは左手の人差し指と中指でシースを把持し、出し入れする方法です(図4a)。左手親指をアングルノブに掛けられるので、ある程度アングルを保持しながら穿刺針を出し入れできます。
もう一つはスコープ操作部を左手前腕と胸で挟むようにして固定してから、左手でシースを出し入れする方法です(図4b)。
アングルノブからは一時的に指を完全に離す必要があるので、基本的には上下左右のアングルを掛けていない場面でのみ使います。まだ粘膜下層に局注液が入っていない初回の局注時など、粘膜のテンションが弱い状況でより有用な方法です。
針をスコープで刺す
一度膨隆を形成した後の追加局注時など、粘膜にある程度のテンションがある状況では、スコープを押し込む操作だけで針は粘膜を貫通し穿刺可能です。
粘膜を傷つけないよう穿刺直前にシース先端から針先を出したら(図5a)、とらえている視野が崩れないよう静かな動きで右手に保持したスコープを押し込んで粘膜を刺し局注します。(図5b,c)
針を出すだけで刺す
この方法も追加局注時など、粘膜にある程度のテンションがある状況で有用です。介助者のハンドル操作でシース内に針を収納し、そのまま次の穿刺点までシース先端をスライド移動させたら、再度ハンドル操作で針先を出します。
粘膜のテンションが不十分で穿刺できない場合でも、スコープの押し込みやシース挿入の操作をわずかに追加するだけで多くの場合、粘膜を貫通できます(図6)。
多くの場合は大きな動作で針に勢いをつけることなく粘膜を貫通でき、視野を大きく動かすことなく安定させながら、針先位置をコントロールした確実な局注が可能です。