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走査の実際 - 胃内からの観察

スコープの挿入は、上部消化管内視鏡検査と同様に左側臥位で行います。胃前庭部までスコープを進め、胃内の空気を吸引、バルーンを膨らませ、スコープをゆっくり引き抜きながら超音波走査を開始します。この時スコープのアングルは上下・左右共にニュートラルにしておきます。

《注意》胃内走査では、膵体部の全域は観察されていません。膵体部の全域の観察には、後に示す十二指腸球部からの観察を加える必要があります。

脾動・静脈、上腸間膜動脈を探すことにより、胃壁との間に膵体部実質が観察されます。この画像は、体外式超音波検査の心窩部横走査で描出される画像に類似しているので理解は容易です。

スコープを引くことで脾動・静脈、左腎、脾臓が観察されます。

スコープの細かい出し入れを行いながら、膵実質内の主膵管を描出します。

次に、膵尾部の観察を行います。通常、膵尾部は被験者の頭側へ向かうことが多く、スコープを引きながら胃体上部から左腎と脾門部を目標に観察します。脾門部の確認は、脾静脈の分岐を指標とします。

スコープの出し入れにより膵尾部を確認します。

胃体部からの走査で膵体部を認識した後に、スコープをやや引くことにより腹腔動脈、脾動脈、総肝動脈が描出されます。
この周囲のリンパ節腫大の有無を確認します。

走査の実際 - 十二指腸下行脚からの観察(縦断法)

スコープを十二指腸球部に進め、上十二指腸角を確認します。ここからERCP操作(stretch法)の要領で、右アングルをかけてスコープを引き抜くと、スコープが十二指腸下行脚に進みます。

スコープ先端が下十二指腸角に到達し、十二指腸水平脚の入口が確認できたら超音波走査を開始します。十二指腸下行脚走査での指標は大動脈、下大静脈、上腸間膜動・静脈です。UPアングルがかかっていない状態では、超音波画像の6時から9時方向に下大静脈、大動脈が円形の横断像(輪切り像)として観察されます。

スコープにUPアングルをかけると、画面左側に下大静脈および大動脈が縦走する管腔像(縦断層像)として描出されます。この時、対側に上腸間膜動・静脈(通常は膵近傍に上腸間膜静脈)が縦走する管腔構造として確認できます。画面右側に大動脈、上腸間膜静脈、スコープに囲まれた膵頭下部が描出されます。

スコープをゆっくり引き抜きながら膵実質を観察していくと、やや低エコーを示す領域が描出されてきます。

さらにスコープをわずかに引くと、この低エコー領域内のスコープに隣接した部分に、三角形様にさらに低エコーの領域が観察されます。この部分が乳頭部近傍です。

スコープをわずかに引き抜くことにより、低エコー領域内に胆管、膵管の合流部付近が管腔構造として描出されてきます。スコープチャンネルから脱気水を注入し十二指腸管腔を広げると乳頭部が確認しやすくなります。

スコープをさらに引き抜くことにより、胆管、膵管を長軸方向に描出します。スコープ近位側が胆管、遠位側が膵管(Wirsung管)です。

走査の実際 - 十二指腸下行脚からの観察(横断法)

スコープを十二指腸球部に進め、上十二指腸角を確認します。ここからERCP操作(stretch法)の要領で、右アングルをかけてスコープを引き抜くとスコープが十二指腸下行脚に進みます。

(縦断法のSTEP1と同様)
縦断法と同様に下十二指腸角から走査を開始します。スコープ先端が水平脚の入口側を向いていますので、画面の下方に水平脚が位置します。(脱気水を流すと容易に認識できます)。

(縦断法のSTEP 2と同様)
縦断法と同様に下十二指腸角でUPアングルをかけ膵頭下部領域を観察します。

UPアングルを戻して、横断像として描出される大動脈、下大静脈と上腸間膜静脈に囲まれる膵頭下部を認識します。そこからスコープを徐々に引き抜きながら、大動脈の右側の膵臓、十二指腸壁に注目し観察すると、三角形の低エコー部分が描出されてきます。

大動脈近傍の十二指腸壁に注目しながら徐々にスコープを引くことにより壁肥厚部が認識されます。ここが乳頭部です。

乳頭部を認識後、僅かにスコープを引くと膵管と胆管が観察されます。通常最初に描出される管腔構造が膵管で、後から胆管が膵管の左側に描出されます。

描出された胆管、膵管を見失わないように、左アングルをかけながら、胆管と膵管の長軸像を描出します。

走査の実際 - 十二指腸下行脚・十二指腸球部からの観察(PULL法)

胆管と胆嚢の観察にはstretch法に引き続いて行うPULL法と、上十二指腸角からスコープを押し込みながら描出するPUSH法があります。まずPULL法を示します。

膵頭部の観察に続いてスコープを引きながら膵頭部から頭体移行部、胆管の観察を行います。スコープに時計回りの回転を加えると、上腸間膜静脈・門脈・脾静脈合流部が確認できます。

逆にスコープに反時計回りのトルクをかけると、胆管が長軸方向に観察されます。

さらにスコープをゆっくり引いていくと、胆管、胆嚢が描出されます。胆嚢頚部は画面左側に、底部が右側に位置します。

走査の実際 - 十二指腸下行脚・十二指腸球部からの観察(PUSH法)

PULL法にて胆管、胆嚢の観察が不充分の時には、PUSH法を用いて胆管、胆嚢を描出します。

十二指腸球部へスコープを再挿入し、空気を吸引、バルーンに注水して走査を開始します。スコープと肝臓の間に胆嚢、下方に膵臓、右側に胆管、大動脈、下大静脈が描出されます。ここでは、スコープを出し入れして主に胆嚢を観察します。

スコープを上十二指腸角へ進め、十二指腸下行脚にスコープ先端が挿入されると、胆嚢、胆管の描出される画面上の位置関係が逆転します。これはスコープ先端が尾側を向くことにより起こる現象です(胆嚢観察時の注意点STEP1を参照)。ここで、画面左に描出される門脈を同定し、スコープとの間の胆管を描出します。この部位には、胆嚢管、固有肝動脈、膵管が管腔構造として描出される可能性があるため、周囲臓器との連続性により鑑別します。

胆管を認識後、この胆管をたどり、スコープのUP・DOWN、左右のアングルを調節しながら押し入れると、十二指腸乳頭近傍まで描出可能です。押し入れてもスコープが進まず、抵抗感が出てきたら、穿孔の危険もあるため無理をしないのが賢明です。

イメージローテーションを用いた膵頭部の観察

膵管・胆管合流部を画面下方に描出したい場合には、イメージローテーションを用います。

大動脈、下大静脈が縦走する管腔像として描出されたら(P6.STEP2)、これらをイメージローテーションを用いて画面上方に位置させると画面下方に上腸間膜静脈、膵頭下部が観察されます。

ここからスコープを引き抜くことにより胆管、膵管の合流部付近を描出させます。十二指腸乳頭部は画面下方に位置します。

画面下方に胆管・膵管を位置させると、下半円表示により拡大観察も行えます。
※これらの機能は、他の部位を詳細に観察する際にも有効です。

胆嚢観察時の注意点

胆嚢観察時、十二指腸下行脚からの引き抜きながらのPULL法では、胆嚢頚部は左側に位置しますが、押し込みでのPUSH法では画像は逆転し、胆嚢頚部は右側に、底部は左側に位置します。これはスコープ先端がPULL法では尾側を向くのに対し、PUSH法では逆に頭側に向くために起こる現象です。