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2 肝移植ドナーに対する肝拡大左葉グラフト採取手術

【CT シミュレーション】

● TotalLiver : 1123ml
● RightLobe : 653ml (58%)
● LeftLobe : 470ml (42%)

2-1 上腹部正中切開

● 上腹部正中切開で開腹する。
● 肝移植ドナーの正常肝は軟らかく、肝授動の際に肝臓が視野の妨げにならず、正中切開で肝両葉を容易に授動することが可能である。

2-2 左肝動脈テーピング

● 左肝動脈を確保する。
● 動脈剥離の前には、肝十二指腸間膜内に塩酸プロカインを浸透させ、動脈攣縮を防いでいる。

2-3 門脈左枝テーピング

● 門脈左右分岐部を露出し、門脈左枝をテーピングする。

2-4 テストクランプ

● 左肝動脈、門脈左枝をクランプして、Demarcation line を確認する。通常はCantlie line にほぼ一致する。
● 術中エコーで門脈右枝、右肝動脈の血流を確認する。

2-5 肝離断

● 肝実質離断は、CUSA で肝実質を破砕・吸引し、残るグリソン枝や肝静脈枝を結紮切離する。ドナー手術では、非肝阻血下に両側を同様に処理する必要がある。

● 5mm 未満の肝静脈枝は、サンダービートでシール切離可能である。

2-6 V5 切離

● 中肝静脈を左側に見ながら、V5 を処理する。

● サンダービートによるシール切離が可能であった。

2-7 V8切離

● 中肝静脈を左肝につけ、V8 をサンダービートでシール切離した。

2-8 胆管造影・切離

● 胆嚢管に挿入したチューブから、術中胆道造影を行う。
● 胆管背側に通したペンローズドレーンを目印に、切離部位を決定する。

2-9 グラフト摘出

手 術 時 間:8時間28分
出 血 量 :932ml
自己血輸血:400ml
同種血輸血:0ml
肝 阻 血:0分

【おわりに】

当施設で施行したTHUNDERBEATを用いた肝亜区域切除、左葉切除手技をご紹介した。術中出血のコントロールや術後合併症の軽減の観点から、ご参考にしていただければ幸甚である。ビデオ編集と画像抽出に尽力した小林剛講師に感謝する。

 

 

2016年1月

広島大学 大学院 医歯薬保健学研究院 応用生命科学部門 消化器・移植外科学 教授 大段 秀樹