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Case : 右上葉腫瘍

森川 慶 先生

聖マリアンナ医科大学病院 

呼吸器内科

症例情報


使用スコープ:BF-1TH1200
観察部位:右上葉
患者情報:66歳男性
既往歴:既往に狭心症(PCI施行)、脳梗塞、重喫煙歴(40本/日)あり。3か月前からの右上肢浮腫と労作時呼吸困難が増強し、2週前に血痰が出現したため近医を受診し、右上肺野に腫瘤影を認め、精査目的で紹介となった。

1-1 右上葉支(WLI)

右上葉支は、区域支のほぼ全体が腫瘍で占拠され、膜様部側の間隙にB2内腔が確認できた。 腫瘍に接した上皮は浮腫状で内腔全体は狭窄するも、腫瘍と連続性はない。 病変はB1およびB3からポリープ状に突出、B1/3spur付近でくびれを呈す。

1-2 右上葉支(TXI 1)

TXIで、腫瘍と周囲の気管上皮が明瞭に区別でき、腫瘍内部が出血や壊死なども含みまだらな構成と推測した。気管支長軸方向・中枢側にポリープ状に進展した腫瘤の尖端を見ていると推察された。

1-3 右上葉支(TXI 2)

TXI2ではより白色光に使い色調で観察できる。

1-4 右上葉支(WLI)

腫瘍の尖端はひも状・こより状に白色壊死を呈した。

1-5 右上葉支(NBI)

NBIで、上皮下は出血と壊死部が混在し、血管性状の観察は困難であった。

1-6 右上葉支(RDI 1)

RDIで表在血管は乏しく、また明らかな出血点も認めなかった。腫瘍内局所での血流量の差が色調に反映されている可能性がある。

1-7 右上葉支(RDI 3)

RDI3で明らかな深部血管がないことを確認し生検処置に進んだ。

症例動画

散布カテーテルを使用して声帯を直視下に麻酔しながらスコープを進め、目的の右上葉支は腫瘍がポリープ状に末端壊死を伴い突出していた。腫瘍の上皮下血管は不明瞭ながら、NBI/RDIで腫瘍の血流量の局在を推定でき、壊死を除去した上で腫瘍本体から生検を実施した。

病理結果

・図A(HE染色):類円形小型な腫瘍細胞の密な増殖がみられる.細胞質に乏しく裸核状で,核クロマチンは繊細,核小体は不明瞭である.
・図B(クロモグラニンA免疫染色):腫瘍細胞は神経内分泌マーカーであるクロモグラニンAの発現を示す.
・最終診断:原発性肺癌(小細胞肺癌)

     

全体コメント

腫瘍細胞の密な増生により、上皮下の血管の検出は困難であったが、WLに加えNBIやRDIで腫瘍局所の血流量を推測することができ、壊死部を除外し生検し得た症例である。生検に際してはROSEも併用しながら、最適な部位を選択することが、処置の安全性の観点からも重要であるため、意義の異なる各モードで多角的に評価し、その情報に一貫性があるか確認してもよい。

共同編者

聖マリアンナ医科大学 病理診断科 
大池 信之 先生

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