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走査の実際 経食道

 

縦隔内での位置を把握するには、高さと左右の指標を理解する必要があります。高さの指標は下方から、下大静脈の横隔膜貫通部(腹腔と縦隔の境)、気管分岐部、大動脈肺動脈窓(AP window)、奇静脈弓、大動脈弓であり、左右の指標は気管を基準とします。

Ⅰ. 高さ、左右の指標確認

STEP 1|腹腔動脈分岐

スコープを胃体下部まで挿入後、時計回転をかけて腹部大動脈を観察します。スコープを引きながら腹部大動脈を頭側に追い、腹腔動脈分岐部を確認し、この周囲のリンパ節を観察します。

STEP 1|横隔膜脚

腹腔動脈分岐部からスコープを少し引いてくると、大動脈の直上に細長い低エコー像が描出されます。これが横隔膜脚であり、腹腔と縦隔の境界を知る指標となります。

STEP 2|肝静脈・下大静脈

引き続きスコープに反時計回転をかけ、肝左葉を描出します。その中に現れる肝静脈を、ゆっくりスコープを引きながら画面上方へ追うと下大静脈が観察されます。

STEP 2|下大静脈・横隔膜貫通部

さらにスコープを少し引いて下大静脈を頭側へ追うことによって、下大静脈の横隔膜貫通部が観察できます。ここが腹腔と縦隔の境界(赤線部分)であり、これより画面右側が縦隔です。

STEP 3|左心系・肺動脈

下大静脈を見ながらスコープをゆっくり引き、反時計回転をかけることにより、下大静脈から右房、さらに左房、左室、上行大動脈が確認でき、この画面下方に肺動脈が描出されます。

STEP 3|気管分岐部

スコープを引きながら肺動脈を振動子側に追うと、右肺動脈の横断面が現れます。この付近が気管分岐部となります。この位置でスコープの反時計回転、時計回転を繰り返し、左右の主気管支である多重の線状高エコーを描出することにより、正確に気管分岐部を同定できます。

STEP 4|気管

気管分岐部からスコープを引いてくると、多重エコーとして描出される気管を同定できます。

STEP 4|AP window

スコープをゆっくり引いて気管を頭側(画面右)へ追いながらスコープに反時計回転とアップアングルをかけると、画面左側に右肺動脈、右側に大動脈弓の横断面が描出されます。この2つの血管に挟まれた部位が“AP window”と呼ばれる領域です。

STEP 5|左鎖骨下動脈

スコープをさらに引いて、大動脈弓から分岐する動脈を同定します。通常はスコープに時計回転をかけていくことにより、左鎖骨下動脈、左総頚動脈、腕頭動脈の順に描出されます。

Ⅱ. 食道周囲の全周性観察

下行大動脈

下行大動脈を始点および終点として、スコープに時計回転あるいは反時計回転をかけて後縦隔を全周性に観察します。これを様々な高さにおいて行うことで、後縦隔全域の観察が可能となります。

左心系

下縦隔レベルで下行大動脈からスコープに時計回転をかけると、左心系が描出されます。

奇静脈・椎体

左心系が見える位置からさらに時計回転をかけると、奇静脈や椎体が認識できます。

Column⑪

縦隔リンパ節に対するEUS-FNA


縦隔リンパ節に対するEUS-FNAを行うに際し、食道からアプローチできるのは、気管の左右両側および背側、そして下縦隔にあるリンパ節です(図)。経食道的には、気管の前にあるリンパ節は描出も穿刺も困難で、肺門リンパ節は気管分岐部に近い主気管支周囲のリンパ節にのみアプローチできます。一方、呼吸器領域で行われている経気管・気管支的アプローチによる超音波気管支鏡(Endobronchial ultrasonography:EBUS)では、気管の前面や肺門・肺内のリンパ節にもアプローチできますが、下縦隔にはアプローチできず、また、大動脈弓と右肺動脈に挟まれた領域(AP window)も穿刺が難しいと言われています。

図 International Association for the Study of Lung Cancerによるリンパ節分類
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