On-Demand Library On-Demand Library
リストへ追加

膵管拡張所見を重視する膵癌拾い上げ診断では
主膵管長軸像を得やすいラジアルスコープが有用

EUSには描出する断面の異なるラジアルスコープ(以下、ラジアル)とコンベックススコープ(以下、コンベックス)があり、膵臓の中でも観察が容易あるいは困難な部位はそれぞれ異なっています(表1)。例えば膵頭 体移行部でZ字形に走行する主膵管の観察には、ラジアルでは経胃走査と経十二指腸走査の組み合わせが必要となり、コンベックスの方が容易に全体像を描出できます。ただし膵癌の拾い上げ診断に関しては、膵管拡張所見を特に重視していることから、主膵管全体の連続した長軸像が得られやすいラジアルの方がより有用と考えています。

 

 

コンベックスの描出断面は長軸方向に対して斜めになるため、膵管の拡張・狭窄を断片的な像で描出せざるを得ません。ラジアルによる像であれば、主膵管全体のうち拡張を来している範囲や、狭窄部位の頭側と尾側での膵管径の差を評価することも容易なうえ、MRCPなど他の診断モダリティで描出した膵管長軸像との比較も容易です。加えて、EUS像を他診療科と共有してディスカッションする場面では、心窩部横走査によるUS画像と位置関係が類似する、ラジアルによる画像の方が共通理解を得やすいというメリットがあります。こうした理由から、当院で膵癌スクリーニング目的のEUSを施行する場合、初回検査は全例ラジアルを使用しています。

表1 ラジアルスコープとコンベックススコープの長所および短所

若手医師にはUS・ラジアル・コンベックスの
長所・短所理解による相補的活用法を習得させる

若手医師に対しEUSの使用方法を習得させるにあたっては、まず前提のスキルとしてUSの描出法と画像の理解、上部消化管内視鏡の安全な挿入操作、CTおよびMRIの画像の理解は必須となります。それらを習得したうえで、EUSのトレーニングでは、US、ラジアル、コンベックスのそれぞれの長所と短所を理解し、目的の像を描出するのにそれら3つをどう相補的に活用すればよいかをトータルに習得していくことが重要です。当院では、EUS-FNA施行予定の症例に対し、患者さんの同意を得て初回のEUSをラジアルで行うことにより、同一病変についてラジアルとコンベックスの双方による像を取得する機会を設けています。これはEUSの習得には非常に効果的であると考えています。

 


また外科手術症例の場合、若手医師には、手術に立ち会って術野を観察させたり手術記録のシェーマを参照させたりして、実際の臓器の見え方を、術前に自分がEUSで描出した像やCT、MRI画像と照合する作業もさせています。これらは解剖学的位置関係のイメージを構築するうえで欠かせないトレーニングです。

 

EUSの描出テクニックの教育では、腹部大動脈や左腎臓など、大きく て分かりやすい周辺臓器・血管をまずメルクマールとして描出し、それを連続的に追いかけることによって目的部位を描出することが基本となります。基本的な描出法を念頭に置きつつ、若手医師それぞれのスコープ操作の癖によって、自分が最初に描出しやすいものをメルクマールとして走査を進めるよう指導することも重要と考えています。これは検査時間延長により患者さんに負担を掛けることを避ける意味もありますが、初学者がモチベーションを保ちながらリラックスしてEUS手技を習得していくためにも、こうした指導方針を採用しています。