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新型スコープGF-UE290は
先端部の操作性向上により
確実かつ容易な十二指腸内の描出手技に貢献

今回使用可能になった新型スコープGF-UE290は、挿入性・操作性や描出能が改善されたことにより、EUS手技の効率性や安全性の向上につながっていると感じています。
まず、先端部外径が13.4mm、軟性部外径が10.9mmと従来機種のGF-UE260-AL5より細径化されたことで(
表2)、特に小柄な高齢患者さんでは挿入時の苦痛が軽減し、受容性が向上した印象があります。

 

 

また、先端硬質部長の短縮・短湾曲化により、スコープ先端がコンパクトになったことで(図3)、特に十二指腸内におけるスコープ先端部の取り回しや動かしやすさが向上しました。例えば胆管の長軸像や膵胆管合流部をPull法で描出する際、下行脚内で乳頭より肛門側までスコープ先端を進めたのち、アップアングルをかけてからスコープを引いてくる操作が非常にスムーズになりました。これにより、特にEUS初学者の場合、従来機種では十二指腸穿孔のリスクを警戒する重圧感が大きかったのに対し、新型スコープではより安心感を持って手技を進められるようになっています。加えて、十二指腸深部の描出能向上にも期待しています。例えば、膵鉤部の病変や解剖学的変異で乳頭開口部が下十二指腸角寄りに位置する症例の場合、従来機種ではスコープを深部まで挿入しPull法で描出するのがしばしば困難でしたが、新型スコープではより確実かつ容易な描出が可能になると推測されます。

※ U:アップアングル、D:ダウンアングル、R:ライトアングル、L:レフトアングル
表2 GF-UE290と従来機種の仕様比較

軟性部の柔軟性向上に伴い、手元の操作に対して、スコープが挙動しやすくなっている印象がありますので、スコープの固定には気を付ける必要があると考えます。このあたりの操作感はGF-UM2000に近い印象を持っています。また、より操作がしやすくなっているため、スコープを進める際に腸管が穿孔しないように、十分に注意を払う必要があるとも感じています。

図3 GF-UE290と従来機種の先端比較

新型スコープGF-UE290の深達度性能向上により
周囲血管への局所浸潤評価にメリットが期待できる

新型スコープでは、従来機種と比較して深達度性能が向上し、プローブからより遠方まで描出することが可能になっています。実際、特にTHE-Pモードで、より遠方まで明瞭な描出がされるようになった印象があります。

これによるメリットとして、小病変の検出感度向上が期待されます(図4)。加えて、膵鉤部癌の上腸間膜動脈への浸潤など、膵癌の resectabilityを判定するうえで評価が必要となる、周囲血管への局所浸潤の有無について、EUSを用いることでより確実な評価が可能となるかもしれないと考えています。膵癌診療ガイドライン2019年版8)では、局所浸潤評価に対し造影CTの方をより強く推奨していますが、造影剤投与がリスクとなる症例もあるため、描出能が向上したEUSのさらなる活用が期待されます。

図4 GF-UE290による小病変の描出。膵IPMNの経過観察例に対し、MRCPでは膵尾部の膵管拡張を認める(a)。
GF-UE260-AL5では膵管拡張のみ認識されるが(b)、GF-UE290では膵管内部の小結節(矢印)が描出された(c)。
(b)、(c)はともにTHE-P画像。

また、新型スコープではスコープコネクター部から着脱可能な超音波接続ケーブルが採用されています。これにより、特に内視鏡洗浄・消毒時の持ち運びや取扱いが容易になっており、感染管理や故障抑制の点でのメリットにつながると考えられます(図5)。

図5. GF-UE290のスコープコネクター部から着脱可能な超音波接続ケーブル

新型スコープGF-UE290の機能向上により 期待されるEUS診断の標準化・均てん化

膵癌の早期発見・診断を促進し、生命予後向上を達成していくための環境整備の一つとして不可欠と考えているのが、EUS診断についての診療報酬による評価の拡充です。EUS-FNAやEUSガイド下治療について診療報酬面の整備が徐々に進められてきたことにより、コンベックスの普及は後押しされてきました。しかし膵癌スクリーニングにおいて有用性を発揮するラジアルについては、観察のみのEUSに対する評価が十分ではないため、導入に向けたハードルが下がっていないという側面もあります。
膵癌の拾い上げ診断に対するEUSの有用性についてはエビデンスが蓄積されてきているなか、今回、複数の点で機能向上が図られた新型スコープGF-UE290が登場しました。こうしたことが弾みとなり、EUS診断が標準的技術として地域医療の現場に広く普及していくことを期待しています。

文献
1) Egawa S, et al. Pancreas. 2012;41:985-92.
2) Kanno A, et al. Pancreatology. 2018;18:61-7.
4) 花田敬士, 日消誌. 2018;115:327-33.
5) 日本膵臓学会 編. 科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2006年版. 金原出版, 2006.
6) 日本膵臓学会 編. 膵癌診療ガイドライン2016年版. 金原出版, 2016.
7) 日本膵臓学会 編. 科学的根拠に基づく膵癌診療ガイドライン2013年版. 金原出版, 2013.
8) 日本膵臓学会 編. 膵癌診療ガイドライン2019年版. 金原出版, 2019.
9) Kitano M, et al. J Gastroenterol. 2019;54:19-32.