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直腸背側剥離時の counter traction の重要性

A

B

図Aは直腸背側を圧排していない状態、図Bは圧排している状態を示す。直腸を前方(腹側)へ圧排しつつ引き上げようとする牽引力により直腸背側の“結合組織間隙”が拡大し、予期せぬ内腸骨静脈の損傷を回避できる。拡大した“結合組織間隙”のどこを切離するかは腫瘍の局在、術者の好みによるが、私自身は直腸寄りを選択している。(仙骨面で予期せぬ静脈に遭遇することがあるから)

C

図Bの破線に沿って切離すると、わずかな蜘蛛の巣状の結合組織を透してピンク色の直腸固有筋膜が確認できる。

D

画面内に捉えられないが、術者の左手は図Bと同様に直腸を腹側へ圧排しつつ引き上げている。拡大した“結合組織間隙”の実線あるいは破線のどちらを切離してもよい。左下腹神経の走行に注意が必要である。

牽引の方向を示す。

E

図Dの実線に沿って切離すると脂肪(※)が露出したため直腸間膜内へ侵入したと思い、切離線を背側に移動。新たな“結合組織間隙”が出現し安心。結果的には直腸間膜内には進入していなかったが、直腸側で剥離を進める際の注意点である。

F

剥離した直腸固有筋膜を鉗子でつまみ、引き上げることにより“結合組織間隙”を拡大することができる。拡大した蜘蛛の巣状“間隙”をさらに切離する。要は適切な牽引力と牽引方向により確認できる“間隙”を作り、それを拡大することである。

G

図Fと同様の操作である。蜘蛛の巣状の“結合組織間隙”を少しずつ(表面より薄く)切離すると、良好な牽引のもとでは、切離した下層に次の“間隙”が展開する。

H

“結合組織間隙”が確認できるまで牽引の方向をいろいろと試すことが大切である。確認できた“間隙”から攻めればよい。切離操作だけでなく上図のように鈍的剥離も用いることで“間隙の深さ”を探ることも重要である。骨盤底が確認できた。