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アーチファクトの低減のコツ


   超音波画像のアーチファクトを低減するため、最初に超音波の特性を理解することが大切です。第一に超音波が対象物に垂直に入射するとS/N比の高い綺麗な画像が得られます。第二にそれぞれの振動子には、最も解像度が高い焦点距離が存在し、一般に超音波スコープでは、2-3㎝に位置します。また、超音波の特性として周波数が高いと精細な画像が得られますが、減衰(遠くは見えない)が強く、逆に周波数が低いと深部まで達しますが画像は粗くなります。
 最初のアーチファクトは、空気によるもので、水と空気の界面で超音波が全て反射されてしまうため引き起こされます。この空気によるアーチファクトの低減は永遠の課題で、検査施行時には、なるべく空気を入れないで所定の位置までスコープを挿入することを心がけます。ただし、幽門輪通過は難しいこともあるので空気を入れてスコープを挿入した後、先端を十二指腸球部に入れた状態でスコープを少し引いてスコープ観察部を前庭部に戻して胃内の空気を吸引したり(図a)、ショートスコープポジションで下十二指腸角に進めた際に空気を吸引後、水(微温湯)を入れ、空気を押し流したり吸引してアーチファクトの低減に心がけます(図b)。これでもまだ空気が邪魔な場合には、バルーンを膨らませたり、体位変換をしたりして対象物と振動子間の空気を除去します。
 第二には、管腔壁などから反射して起こるアーチファクト(グレーティングローブ)があり、嚢胞や管腔内の観察がしづらいことがあります。このアーチファクトの低減にはTHE(p.28参照)が優れています(図c)。
 第三には、振動子とバルーンの間を超音波が何度も行き来するために起こるアーチファクト(多重エコー)があります。このアーチファクトはTHEで低減できませんので、このアーチファクトで病変の観察がしづらい場合は、バルーンの大きさを変えるのが有用です。

ラジアル走査式超音波内視鏡の長所と短所


    ラジアル走査式EUSとコンベックス走査式EUSはしばしば比較されますが、ともに長所と短所があります。ラジアル走査式EUSの長所はスコープ軸に対して360度の超音波画像が得られることで、極端なスコープ操作をすることなく消化管外の胆道や膵臓を含めた広い領域の描出が可能です。特に長軸に描出すると病変の存在部位がわかりやすい胆嚢・胆管や膵体尾部・主膵管の超音波画像を得るのは、ラジアル走査式EUSの方が良い場合があります。こうした特徴もあり、本邦ではラジアル走査式EUSはこれまでスクリーニングとしても普及してきました。近年、EUS-FNAが普及し本邦でもコンベックス走査式EUSをスクリーニングに用いる施設も増えてきました。Kanekoら(Endosc Int Open. 2014;2:E160-70)のラジアル走査式EUSとコンベックス走査式EUSのRCTでも示されているように、ラジアル走査式EUSでは膵臓の頭体移行部と肝門部領域は解剖学的にコンベックス走査式EUSに比べて描出が不十分になる可能性があります。またラジアル走査式EUSの短所は、どんなに病変が上手に描出できてもEUS-FNAができないことです。したがって、ラジアル走査式EUSを用いる場合にはこうした一長一短を熟知して上手に使いこなしましょう。

検査前MRCPの役割


図a

 EUSは良好な超音波画像を得るために送気を控えて走査することが求められます。このため、内視鏡画像から振動子の位置を正確に把握することが難しい場合が多く、描出されるEUS所見によって振動子の位置を推測することが多いです。
 特に初学者がEUSを習得する初期の段階で“EUSが難しい”と感じる原因の一つにこの問題があります。そこで、EUSに先行して予め腹部MRI(MRCP)を撮像しておき、術者の正面にMRCP像と超音波画像が比較できるような配置で検査を行うと観察の助けとなります(図a)。
 例えば、胆嚢と肝臓の位置関係や、総胆管偏位の把握により、胆嚢および総胆管を描出しやすい振動子の位置の推測が可能になります。また、総胆管や主膵管の拡張や狭窄を把握しておくことで、ラジアル走査式EUSによるそれらの長軸像の比較が容易となることが期待されます。

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