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悪性胸膜中皮腫

茨城県立中央病院・茨城県地域がんセンター 鏑木 孝之

【症例F-1】左前-側胸壁
壁側胸膜の石灰化。
腫瘍浸潤による不整な胸膜肥厚を呈し、表層に粒状病変が多発する。

【症例F-2】左側-後壁と横隔膜
横隔膜に散在する血管増生を伴う不整形結節を認める。

【症例G-1】左側壁
小結節病変が稠密性に集簇する。
胸膜は中等度に肥厚し肋間構造が不明瞭になっている。

【症例G-2】左後壁
厚く斑状に隆起した胸膜と稠密性に集簇した結節を認める

【症例G-3】左後壁[NBI画像]
集簇した結節には拡張した不整血管を、胸膜面には充血した血管を認める。

ワンポイント

ポート挿入時に、症例により胸壁肥厚に留意する。胸腔内を観察すると観察臓側胸膜の病変部は既存の血管や肋間構造を透見できない程度に不整に肥厚していることが多い。胸膜の癒着や線維性の隔壁形成により局所麻酔下胸腔鏡での観察が困難な症例もある。隆起性病変は5-10mm程度で隣接する腫瘤が集簇、癒合する特徴がある。腫瘤部には拡張した不整血管を、胸膜面には充血した血管を認めることが多い。おおよそ半数の症例でアスベスト暴露を示す胸膜プラークを確認できる。生検診断には壁側胸膜の全層採取が望ましい。

急性膿胸・非特異的胸膜炎

獨協医科大学病院 武政 聡浩

急性膿胸【症例H-1】
膿性の厚い被膜が胸膜腔全体を覆っている。膿性胸水からStreptococcus intermediusの検出あり。

急性膿胸【症例H-2】
肥厚した胸膜により肋間筋や血管などの構造物は全く透見できない。

急性膿胸【症例H-3】[NBI画像]
肥厚した胸膜にはNBI画像でも表面に血管所見を認めない。

非特異的胸膜炎【症例I-1】
胸膜は高度に肥厚し、肋間筋や血管などの構造物は全く透見できない。
左上の青線枠内に示す線維性癒着の部位は疎なフィブリン膜による癒着生じている。

非特異的胸膜炎【症例I-2】
左上の枠内に示す線維性癒着の部位は、疎なフィブリン膜による癒着であり、鉗子で掻爬できる。

非特異的胸膜炎【症例I-3】
線維性癒着部位を掻爬し、胸腔内を展開。胸膜は高度に肥厚し、肋間筋や血管などの構造物は全く透見できない。

ワンポイント

[急性膿胸症例(H-1,2,3)]
急性膿胸では、急速なフィブリン析出によりコンパートメントが形成され、ドレナージが困難となることが多い。なるべく早期に胸腔鏡で癒着の解除ができると、有効なドレナージの範囲が拡大し、治療期間を短くできる可能性がある。
[非特異的胸膜炎(I-1,2,3)]
非特異的胸膜炎で生じる線維素性癒着は、白色の疎なフィブリン膜による癒着で、鉗子で容易に破壊できる。
線維性癒着となり癒着が強固になると臓側胸膜と壁側胸膜が分離不能となる。

非特異的胸膜炎・慢性線維性胸膜炎

獨協医科大学病院 武政 聡浩

石綿曝露歴のある非特異的胸膜炎症例 【症例J-1】
壁側胸膜は肋間筋や血管の透見度が低下、肋間の陥凹も減少し不明な中等度胸膜肥厚像を呈する、臓側胸膜が白色フィブリン被膜に覆われ、捕捉され拡張できない(捕捉肺)。

石綿曝露歴のある非特異的胸膜炎症例 【症例J-2】
臓側胸膜が肥厚した白色フィブリン被膜に覆われた捕捉肺の所見

石綿曝露歴のある非特異的胸膜炎症例 【症例J-3】
一部の壁側胸膜は胸膜肥厚が高度で、肋間筋や血管などの構造物は全く透見できない。臓側胸膜も肥厚し、肺表面の構造が不明瞭になっている。

石綿曝露歴のある慢性線維性胸膜炎 【症例K-1】
肺尖部の領域に臓側胸膜に黒色炭分沈着の中心に白色結節を認める(蠟様結節)。また、肺尖部に一部胸膜プラーク所見を認める。

石綿曝露歴のある慢性線維性胸膜炎 【症例K-2】
胸膜肥厚を認め、表層に粒状病変が多発する。高周波ナイフとクライオ生検も併用し全層生検を実施したが、脂肪層への中皮細胞の浸潤を認めず慢性線維性胸膜炎の診断に至る。

石綿曝露歴のある慢性線維性胸膜炎 【症例K-3】[NBI画像]
肥厚する胸膜の表層に粒状病変が多発する。NBIで一部に拡張した血管を認めるが、大部分は白色の線維性被膜に覆われている。

ワンポイント

[非特異的胸膜炎症例(J-1,2,3)と慢性線維性胸膜炎症例(K-1,2,3)]
ともに石綿曝露歴がある症例。石綿曝露歴のある症例では、捕捉肺、蝋様結節、胸膜プラーク所見を合併することがある。また、悪性腫瘍で認める隆起性変化が認められるため、全層生検が診断の決め手になることがある。必要に応じて高周波ナイフやクライオ生検の併用を検討すべき症例がある。